福祉施設と災害について、一例として当園の体験をまとめました。
一人でも多くの方を災害から守るための一助になればと願います。

災害を乗り越えて

大水害発生。間一髪の避難。

大水害発生。間一髪の避難。平成22年10月20日、旧「住用の園」があった住用町西仲間地区は、前日から雨に見舞われていた。園は普段通りに運営されていたが、朝10時頃に異変が起こった。園の横を流れるこたり川の水が橋げたを越え、道路が冠水。12時半頃、浴室横の土手を濁流が乗り越えて大量に流れ込んだ。

館内を濁流が流れ、現実とは思えない光景が広がった。間一髪、入所者・利用者は職員の誘導で被災箇所から最も遠い場所へ全員移動。各職員も危険を逃れて避難することができた。そして、職員はマットレスなどのバリケードで避難場所への浸水を防いだ。

その後、消防、大島支庁等へ連絡。職員は、入所者・利用者の安否確認、体調の確認、見守りを行い、「安心して」と声を掛け続けた。厳しい道路事情を越えて駆けつけた救助隊、ボランティアの援助を受けて、午後10時半から避難開始。午前3時には交流館へと全員無事に避難が完了した。

一人のけが人もなく、避難完了。

一人のけが人もなく、避難完了。大島支庁の尽力により、翌日から入所者の受け入れ先を探すことができ、様々な施設や病院に一時受け入れが決まった。そして、22日には自衛隊の支援を得て、全員の搬送を無事に終えることができ、デイサービス利用者も23日には帰宅が完了した。

この大災害にも関わらず、一人のけが人も出なかったのは、多くの機関の惜しみない協力と支援をいただいたこと、そして、職員の懸命な行動、さらに、被災時間が12時半頃で入浴者がおらず、食事が済んでいて避難が短時間でできた、濁流の流れが分散されたなど、奇跡的な幸運が重なったことも大きい。

建物は壊滅的な被害を受け、園の復活は危ぶまれた。しかし、この奇跡的な出来事は、あらためて「地域の高齢者が安心して暮らせる施設を」という使命を一同に痛感させることとなった。

一日も早くサービスを再開するために。

一日も早くサービスを再開するために。サービスを待つ利用者のためにも、災害に屈してはいられない。

被災2日後には、居宅介護支援センター事業、ホームヘルプ事業を再開。11月1日には仮事務所を開所。12月にはデイサービスも奄美体験交流館の理解を得て再開。同時に宅配給食も始まった。

懸案の一つであった解雇職員の雇用については、国、県、奄美市等の協力を得て、緊急雇用先を確保することができ、再開への大きな力となった。

災害を経て、介護への想いあらたに。

災害を経て、介護への想いあらたに。この豪雨災害で園は大きな痛手を負った。しかし、この経験が一同に与えた学びも大きかった。非常事態に際し、一人ひとりに“介護とは”という命題が突き付けられ、本質に向き合わざるを得なかったからだ。

そして、再開まで期間に、働き続けた者も、離れていた者も、改めて介護という仕事に対しての熱い思いを再認識し、新しいスタートへ向かうことができた。災害からの2年間。園を応援してくれる様々な人々や機関の理解と協力を支えに、施設長以下職員は心をひとつに、園の復活へ一歩ずつ前進していった。そして、平成24年11月、復活の時を迎えることとなった。